翌日、樹里は学校を休んでいた。


スッチはきっと何かを知ってるんだろうけど、でも言葉にはしてくれない。


あたし達のことは、やっぱりあらぬ噂を立てられているみたいだが、でも他人の目なんてどうだって良かった。


ただ、昨日のこと全てが現実なのだと告げられているかのよう。


だから学校にいたって気分は悪くなる一方で、今更になって沙雪のお腹が痛くなる気持ちがわかった気がした。



「昨日あの後、ヒロトくんと大丈夫だった?」


隣の席から彼女は心配そうにあたしの顔を覗き込んで来る。



「別に、ヒロトとは何でもないから。」


けれどもあたしは、そんな言葉で遮断した。


“何でもない”なんてことはないけど、でも沙雪にまで責められそうで怖かったのだ。


未だあたしは、昨日のこと全てが夢であればと願っている。


勇介への気持ちを簡単に切り替えられるほど割り切った人間にはなれなくて、だからヒロトの言葉さえも曖昧にしたまま。


アイツはこういう時だけ優しくて、嫌になる。


あの時だって無理やりにでもヤろうと思えば出来たはずなのに、なのに彼はそれをしなかった。


つけ込むと言いながら、その気配を見せないんだから。



「ねぇ、奈々!
お腹空いたしさ、学食行こうよっ!」


沙雪はわざとのように明るく言ってくれた。


返事もしていないのに手を引かれるが、食欲なんて湧くはずもない。


でも、スッチが来て、そしてヒロトまで現れた時には、まるで示し合わせたかのようだと思い、笑えてしまった。