「ママこそあの内科医とどうなの?」


聞いた瞬間、彼女は頬を赤らめる。



「彼ね、すっごいお洒落なお店知ってるの。
それに素敵なこと言ってくれるし、ママもうメロメロ。」


メロメロ、って。


口元を引き攣らせるあたしにも気付かず、ママはまるで少女のように話してくれる。


でも、別に誰とも結婚する気はないらしい。



「てか、どうやって出会ってんの?」


「基本は飲み会とか結婚式の二次会とかかなぁ。
でも、その辺歩いてるだけで、出会いって結構あるものよ?」


一瞬、勇介の顔が頭をよぎった。


ママはいつも、世界の半分は男なのよ、と言いながら、すぐに誰とでも仲良くなれる人。


家事全般はダメだけど、男からも女からも平等に好かれるタイプで、羨ましい限りなのだが。



「ママとあたしってさ、顔は似てるけど性格は全然だよね。」


「ホントよねぇ。
奈々ってそんなんで、人生損してるとか思わない?」


思うよ、ママの所為で。


とは言わないが、あたしは呆れるように肩をすくめた。



「てか、早く晩ご飯作ってよ。」


「えっ、ママが作んの?」


「当たり前じゃん。
第一、これ以上当番無視してあたしに作らせたら、罰金取るからね?」


怖ーい、と大袈裟に彼女は言う。


本当に子供みたいな人だ。



「何だかママよりずっと、奈々の方が母親っぽいわね。」