弾かれたように顔を向けてみれば、こちらを見て驚いたように立ち尽くす、ママの姿。


彼女は勇介を見てからあたしの足の包帯に気付き、駆け寄ってきた。



「奈々、怪我したの?!」


ママはあたしの怪我には敏感だ。


勇介は、横で戸惑うように瞳を揺らしていた。


どうしようかと思っていると、ママはあたしの視線に気付き、彼の方を向く。



「カレシ?」


なのに勇介の答えを聞くより先に、ママはぱっと顔を明るくした。



「どうもはじめまして、奈々のママの静香です。
静香さん、って呼んでね。」


「ちょっ、ママ!」


「ねぇ、あなたも一緒にこれからご飯食べない?
ママ、こんな格好良い子は大歓迎よ!」


言い出した彼女を、何とか制止した。


勇介はひどく驚いた顔をして、でもすぐに社交的な笑みに変わる。



「すいません、これから予定があるので。」


「…あら、残念ねぇ。」


「じゃあ俺、帰りますね。」


そして単車に乗り、彼はそれを走らせる。


まるで逃げたみたいで、絶対ママの所為だと思いながら、頬を膨らませた。



「ママがいきなり馴れ馴れしいから、勇介帰っちゃったんだよ?」


「だってママ、嬉しかったんだもーん。」


子供みたいなことを言いながら、彼女もまた、唇を尖らせた。


あたしはため息を混じらせ、こめかみを押さえる。