家に帰ると、ママが珍しく、料理の本を読みながら唸っていた。


そしてあたしを見つけ、ぱあっと顔を明るくさせる。



「奈々、これ作って!」


「は?
嫌だし、自分でやってみなよ。」


「えー、ケチな子。」


そして不貞腐れる姿を前に、ため息が出る。



「そういえば最近、アンタ早いじゃん。
もしかして彼氏と別れちゃったの?」


「そんな感じー。」


「えっ、何で?
避妊してくれなかったから?」


何でそうなるんだよ、って感じだけど。


エッチをするなとか、そんなことは言われたことがない。



「じゃあさっさと新しい彼氏作んなきゃね。
女は彼氏がいてこそ輝くってもんだし、欲求不満だからそんな機嫌悪い顔してんだよ。」


放っといて、と睨んでおいた。


第一、あたしをママと同じように考えないでほしい。



「一応顔だけは良く産んであげたんだからさぁ。」


「…そりゃどうも。」


「ねぇ、好きな人とか気になる人、いないの?」


どこにいても恋愛の話だ。


それよりアンタ、料理の話してたんじゃないのかよ、って感じだけれど。