グラウンドからは歓声やリレーの音楽が聞こえてきて、なのにここに流れる時間はいつも、穏やかなもの。


勇介といると、やっぱり安心してしまう。



「最近の奈々は寂しそうだよね。」


沙雪とスッチは良い感じだから邪魔しちゃ悪いし、樹里は腹の底なんて見せないし、ヒロトには相変わらず無視をされているから。


それを見抜いているのだろう勇介の言葉には、やっぱり曖昧な笑みでしか返せない。



「奈々が寂しそうだと、俺も寂しい。」


強い風が吹いて、乱れたあたしの髪の毛を、彼の指先によって梳かされる。


口元だけで笑った勇介は、やっぱり優しい顔をしていた。



「でも、勇介がいるから大丈夫。」


だから、驚くほど素直に言葉にしていたのだ。


それは、好きだと告白しているようなものだろうけど。


一瞬目を丸くした彼は、伏し目がちに嬉しそうな顔に変わる。


胸が締め付けられるように高鳴った。



「そんな可愛いこと言ってたら襲っちゃうよ?」


わざと意地悪く言った勇介の言葉に、笑ってしまった。


笑ってしまったら、キスをされた。


不意打ちは、この人の得意分野なのだろう。



「今日は怒らないんだね。」


そして今度は長く唇を奪われる。


抱き締められて、切なくなって、あぁ、あたし勇介のことが好きなんだな、って。


それがやっと、確かなものに変わった気がした。



「なぁ、付き合おっか?」