ヒロトが学校を辞めるかも、ということを何度も聞くことと同じくらい、今の彼が遊び歩いている話は耳にしていた。


アイツは確かにチャラいけど、少なくとも、女遊びなんてするタイプではないはずなのに。


それに、悪い連中とつるんでる、って話も聞く。


嘘か本当かなんて知らないが、でもやっぱり心配になるのは相変わらずだ。


スッチも「最近のヒロトはよくわかんない。」なんて言うし、誰も彼の現状を知らないことが、何だか寂しくも感じてしまう。






そして訪れた、体育祭当日。


秋晴れの空と心地の良い風が吹き、生徒達は盛り上がりを見せている。


沙雪とスッチは早速「日射病になった。」なんて見え見えの嘘で、保健の先生がいるテントでサボっていた。


ヒロトも今日ばかりは辛うじて来ているようで、「ババアがうるせぇから。」とか言ってたけど。


それからすぐに樹里と話し込むようにふたりでどこかに消えたので、仕方がなくあたしは、勇介を探すために歩いた。


グラウンドにいないということは、必然的にあそこ以外にないはずだ。


向かうのは、第4校舎。



「やっぱりここにいたんだ?」


屋上の扉に手を掛けてみれば、ドアが開いていて、そこで勇介はサボるように煙草を吸いながら空を仰いでいた。


近付けば、彼は目を細めるようにこちらを見る。



「奈々もサボり?」


「てか、みんな勝手にいなくなるから、あたしひとりでさぁ。」


ふうん、と言った勇介は、煙草を指で弾いて飛ばした。


それは風に転がり、向こうの方へと行ってしまう。