夏が終われば、すぐに秋が深まった。


あたし達はみんながみんな、個と集団との狭間で笑い合っていた。


まるでそれが暗黙のルールであるかのように、それぞれに他愛もない話をしながら、何かを追求することを避けていたんだ。


聞かない代わりに言わないで、とでもいったところだろうか。


そんな中で、体育祭が近付いていた。


もちろんそんな行事に張り切るタイプは、あたし達の周りにはいないわけだが。



「樹里ってリレー出るんでしょ?」


「そうそう、最悪!
てか、そういう奈々は何の種目に出んの?」


「あたしは応援係だから。」


「んなもんないっての。」


正直、あたし達の頭の中は、どうやってサボるかということでいっぱいだった。


もちろん休むことは許されていないので、出来るだけ種目には出ないようにしていたわけだが。



「奈々は100メートル走だってばぁ!」


横から口を挟んだ沙雪に、あたしはむくれた。


残念ながらうちの学校のルールでは、全員が何かしらの種目に出場しなければならないのだ。


思い出せば、今から面倒でしかない。



「てか、勇介くんとかヒロトくんとか、走るとこ想像出来ないんですけどー。」


「それ以前にあのふたり、サボりそうじゃない?」


沙雪と樹里はそう盛り上がる。


だけども出てきた名前にまたげんなりとさせられてしまい、体育祭なんてなくなれば良いと、本気で思った。


だってそこに、盛り上がる要素なんてひとつもないのだから。