「お前、どっか行くの?」


「サボるとこ探してんのー。」


「じゃあ俺も一緒にサボってやろうか?」


マジ勘弁、とあたしは言った。


ヒロトと一緒にサボるだなんて、今まで良いことがあった試しがない。



「アンタ去年、一緒にサボってたあたしにキスしようとしたじゃん。
襲われたくないから、もうヒロトとサボんの嫌なの。」


「ありゃあ若気の至りだろ。」


相変わらずのスカした顔で言ってくれる。


まるで絵に描いたように軽薄そのものだ。


ちなみにあたしは、地球が滅亡しても、こいつとだけはアダムとイブになんてならない、と心に誓っているのだが。



「アンタが去勢したらキスくらいしてあげるわよ。」


「ムカつく女。」


ハッと笑う彼を見て、何故こんなに口喧嘩を繰り返すだけの仲なのに、あたしを好きなのかなと思う。


いや、こいつは単に、あたしとヤりたいってだけかもしれないが。



「ってことで、西女の彼女と末永くお幸せにー。」


それだけ残し、あたしは手をヒラヒラとさせた。


今更教室に戻る気にもなれず、ふと留年という言葉が頭をよぎったが、それを振り払い、サボる方を選んだ。


ポケットからチュッパを取り出し、包みを開けてそれを咥える。


糖分は大事らしいしね。