「でもさ、奈々が後輩になったら便利だよねぇ。
年下の格好良い子紹介してもらったりしてさぁ!」


沙雪が言うと、年下は勘弁、と樹里が横から突っ込みを入れた。


ふたりはあたしの留年話で盛り上がっていて、何だかなぁ、と思うのだが。


若者パワーだなと思っているあたしは、もしかしたらおばさんなのかもしれない。



「奈々が留年したら、ヒロトどうすんのかなぁ?」


樹里は思い出したようにその名を口にした。



「あたし留年しないし、したとしてもヒロトなんか関係ないって。」


「でもヒロトくんも留年しそうじゃん?」


すかさず沙雪が言った。


もう、頭が痛くなってきて、あたしトイレ、と言って逃げるように席を立つ。


てゆーか、あたしはふたりにとっておもちゃなんじゃないかと、時々思うのだが。


願わくば、そうでないことを祈りたい。



「奈々!」


呼ばれて振り返ると、そこに立つ人物の姿にげんなりとしてしまう。


噂をすれば何とやら、ってヤツだろう。



「出たよ、ヒロト。」


「あ?」


彼は一瞬のうちに眉を寄せ、恐ろしい顔になってくれる。


着崩した制服はネクタイさえしておらず、だらしくなくも金髪が陽に染まる。



「お前、その不機嫌な顔どうにかしろよ。」


「アンタは頼むから、その怖い顔どうにかしてよ。」


何だかもう、疲れ果てる。


てゆーか、こんなヤツと友達だと思われては、あたしは平穏無事な学校生活が送れなくなる気がしてならいわけだが。