「何の話してんのー?」


呆けていると、背中に感じた重み。


引き攣る口元のままに顔だけで振り返り見れば、目を輝かせた沙雪の登場。


樹里は大爆笑だ。



「そういえば奈々、最近遅刻しないじゃん。」


「担任にこの前超怒られてさ。
このままじゃ進級させないぞとか言われちゃって。」


「マジ?!
奈々、5月なのにすでに留年決定?!」


沙雪はだけども目を輝かせる。


冗談じゃない、と思いながら、あたしは肩をすくめた。



「さゆ、笑い過ぎだから!」


そう言いながらも、樹里だって笑っている。


不貞腐れながらあたしは、でも問題児なんかじゃない、と思っているのだが。



「そっかぁ、奈々は後輩になるんだぁ?」


「ちょっとちょっと。
樹里さん、それ笑えませんから。」


今週は、一度だけ遅刻をした。


でも勇介と会うことはなく、だから先週のことがまるで嘘のようだと思う。