あれから二日後、あたしと樹里は、朝から産婦人科の前に立っていた。


妊婦さん達にはじろじろと見られたが、気にすることはない。


午前10時を少し過ぎた頃、彼女は母親に付き添われるようにしてやってきた。



「さゆ!」


「沙雪!」


慌てて駆け寄ったあたし達を見た彼女は、散々泣き腫らしたような目に薄く涙を浮かべる。


あたしや樹里が来たって何も出来ないけれど、でも家で待ってるなんてもっと出来なかったから。


もちろん、大地くんの姿はなかった。



「うちら、終わるまで待ってるから!」


「そうだよ、アンタはひとりじゃないんだからね!」


ちっちゃな沙雪を、あたしと樹里で必死に抱き締めた。


彼女のママさんもまた、その横で涙を堪えるような顔をしている。


でも、時間だから、と背中を押され、あたし達は体を離した。



「行ってくるね。」


沙雪はその言葉を残し、産婦人科の門をくぐる。


樹里とふたり、その後ろ姿を唇を噛み締めて見ていると、ママさんが声を掛けてくれた。



「樹里ちゃんも奈々ちゃんも、本当にありがとう。」


うちらはさゆの友達だから、と樹里が言う。


ママさんは、沙雪に似て可愛い人だからこそ、余計に涙の混じる顔が痛々しい。