「ふたりが付き合うって聞いて、大地にちゃんとしろよ、って俺言ったんだ。」


「…うん。」


「奈々の友達だし、適当なことすんな、って。」


「…うん。」


なのに、と言った彼は唇を噛み締める。


これはもしかしたら、勇介なりの懺悔のつもりなのかもしれない。


誰が何をしていても関係ないのだというスタンスを貫いていたはずの彼らしくないけれど、でも勇介もまた、後悔する部分もあったのだろう。



「アイツもさ、ひかりチャンのことケジメつけなきゃってのは思ってたみたいなんだ。
でもやっぱ、幼馴染だしずっと一緒に育ってきたわけじゃん?」


だからそう簡単に切り離して考えられない気持ちは、わからないわけではない。



「でも、こんなことになってから選ぶなんて、残酷だよな。」


彼の呟きは、物悲しく消えた。


こんな瞬間ですら、沙雪のお腹の命は一秒ごとに育っているというのに。



「手術、明後日だって。」


そっか、と勇介はそれだけ言った。


結局は、大地くんは沙雪と別れ、その幼馴染を選んだのだろう。


でももし彼らがその後付き合うようなことになったら、大地くんは幸せだと思うのだろうか。


その彼女と何事もなかったかのように、笑い合ったりするのだろうか。


やっぱり考えるだけで悔しくなる。



「大地はきっと行かないだろうね。」


「…別れたんだって。」


「うん、だと思ってた。」


こんなことになってまで、愛されもしない関係を続けられないのはわかってる。


だから優しくしない方が良いんだってこともわかってるけど、大地くんはお腹の子の“父親”なのに、悲しかった。