「憎むべき相手がいるってことは、きっとせめてもの救いなんだよ。」


大地くんを憎むことで、沙雪が救われる?


好きだった人に心だけではなく体も傷つけられて、だから俺を恨んでくれ、ってことだろうか。


憎まれ役に徹することで、“責任”になるとでも言うの?


でもそんなの、男なんて女と違って傷なんて残らないから、忘れてしまえば終わるじゃないか。



「結局は俺らが何を言ったって、答えを出すのはあのふたりなんだよ。」


いつもより遠い空に、いつもと変わらない輝きの星が、無数にあった。


泣くことしか出来ないあたしを、まるで勇介は支えるように抱き締めてくれる。


沙雪が苦しんでいるというのに、男に慰められているあたしは、きっと最低な親友なのかもしれないけれど。



「ねぇ。」


「ん?」


「最初のあの日、もしもたった一回で子供出来てたら、勇介どうしてた?」


あの時、あたし達だって避妊をしていなかった。


だから沙雪のことは他人事ではなくて、見も知らない相手とヤッたあたし達の方が、ずっとタチが悪いのだろう。



「あたしがもし、産みたいって言ったとしたら?」


「駆け落ちしてでも産ませるよ。」


例えそれが嘘だったとしても、確かにあたしはその言葉で救われたのかもしれない。


強く抱き締められ、また涙が溢れる。



「俺は何があっても、奈々のことを傷つけたりはしない。」


あたしにとって、勇介は何なのだろう。


沙雪にとって、大地くんは何だったのだろう。


考えのひとつさえまとまらなくて、やりきれなくなってしまう。