「けど、さゆは妊娠したんだよ?!
大地くんの子供なんだよ?!」


怒りをぶつけるように声を荒げると、落ち着いて、と勇介は言う。



「大地は自分が悪いってわかってるから、だからこのままヒールのまま終わらせたいって。」


「終わらせるって、何?
それって自己陶酔で、結局は逃げてるだけじゃん!」


つまりは子供が出来てしまったから、別れるということだ。


自分が悪役になれば全てが収まるなんて、そんなんじゃ沙雪が傷つけられっぱなしじゃないか。



「そんなのは責任じゃないよ!」


奈々、と勇介は再びあたしを制止する。


彼に怒りをぶつけたって意味はないのだとわかっていても、頭と心は別物だ。



「でも、育てられないなら産むべきじゃない。」


「…そんな、こと…」


「俺らはまだ未成年で、高校生で、“大人”なんかじゃないんだよ。
確かに宿った命を消すことは罪だけど、その罪は、大地やさゆちゃんが背負わなきゃいけないんだ。」


それが、避妊もせずに軽々しく関係を持ったことへの責任なのだと、彼は言う。


言ってることは理解出来るけど、それは人殺しへの肯定ではないか。



「じゃあ、奈々がさゆちゃんだったら産むの?」


途端に言葉が出なくなる。


ママやシンちゃんやトキくんは、あたしに“幸せな結婚”を望んでいる。


それを裏切って、おまけに父親のいない子を、この年で、ひとりで育てられるのだろうか。


結局は、沙雪と同じ結論に達することしか出来ず、だから自己嫌悪に陥ってしまう。


きっとあたしだって同罪なんだ、と。