驚いて樹里を見るが、彼女は下を歩く人を見て笑っている。


言葉には詰まったものの、樹里はそれ以上追及することもなく、またあたしは窓の外へと視線を戻した。


そこにはもう、勇介の姿はない。



「樹里って何で年上オンリーなの?」


「うち、お兄ちゃんいるじゃん?
昔からよくお兄ちゃんの友達が遊んでくれてたし、初恋もお兄ちゃんの友達だった。」


だから同世代は子供っぽく見えるのだと、彼女は言う。



「別に、そうじゃなきゃ無理ってわけでもないけど。」


それより、と言って、樹里はあたしに瞳を向ける。



「奈々こそどういう基準で彼氏選んでんの?」


「何となく話が合って、何となく一緒にいて楽しくて、何となくコクられたから付き合う、みたいな。」


何それー、と彼女は声を上げて笑った。


お腹を抱えて笑っていても、やっぱり美人で羨ましい限りなのだが。



「じゃあ、別れる理由は?」


「俺のことなんて好きじゃないんだろー、とかいきなり言われて振られたり。
メール返さないだけでキレられるのが鬱陶しくて別れたり、そんな感じ。」


本当に、いつもそんな感じだ。


だから3ヶ月以上続かないし、大抵は冷めて終わることが多い。



「束縛はされたくない、って?」


「まぁね。
いちいち今何やってるかとか、何で報告しなきゃいけないんだよ、って思う。」


「それ、奈々らしいね。」


「まぁ、さゆに言わせりゃ意味不明って感じで怒られるんだけどさ。」


沙雪は常にお化粧をしているか彼氏とメールをしているか、だ。


不安になったりやきもちを焼いたりするのが恋愛だとか言ってたが、あたしにはそれこそ意味がわからないと思う。


今日も抜けるような青い空を見上げ、ため息を混じらせた。