それが何を意味するのかわからないほど、馬鹿ではない。


一度はためらったものの、こくりと頷くあたしに、勇介は息を吐いた。



「大地の好きな子、幼馴染なんだ。」


ひかり、という名前だそうだ。


大地くんは小さな頃からずっと、同い年で隣の家に住む彼女のことが好きだったのだという。


でも近過ぎて、だからその想いは成就されることはなかった。


ずっと傍にいて、いつも見守っているのに、彼女の気持ちが自分に向くことはなかったのだとか。


そして互いに高校生にもなれば、当然のように恋人が出来る。



「でもある日、ひかりチャンが彼氏と別れて泣いてたんだって。
大地はそれ慰めてて、まぁ、成り行きでそういう関係になったらしいけど。」


言ってみれば、ただのセフレだ。


でも大地くんは、好きだったからこそ何も言えず、そんな関係に甘んじていた。


彼女に好きな男が出来れば応援してやって、泣いていたらまた慰める。


付き合おうと言うことが、この関係を壊してしまうことに繋がるのでは、という恐怖心もあったらしい。


それから一年、曖昧なままの関係を繰り返していた。



「さゆちゃんのことだって、嫌いとかじゃないと思うんだ。
でも、ひかりチャン以上ではなかった。」


話を聞いていて、どうしようもない涙が溢れてくる。


そんな大地くんを想像することなんて出来ないし、だからって可哀想だから仕方ない、なんて言葉で片付けられるはずもない。


結局は、沙雪は身代わりだったということ。



「どことなく似てるんだって、ひかりチャンとさゆちゃんは。」