「勇介と一緒に来てほしい、って。」


「何かあったの?」


「わかんないけど、あんま良いことじゃないっぽい。
それに、電話じゃ話せないとか何とか…」


とりあえず行こう、と勇介は言う。


未だ戸惑ったままのあたしの腕を取って立たせてくれ、ヘルメットを被せられた。



「行かなきゃわかんないし。
それに、樹里ちゃんが言うなら本当に緊急事態なんじゃない?」


確かに、勇介の言う通りだ。


単車にまたがった彼に店の名前と大体の場所を伝えると、それはすぐに走り出した。


焼けるような太陽と、生温かな風に吹かれながらも、どうにも不安になってしまう。







店の前に着いたとき、更にあたしは困惑してしまう。


それに気付いたらしい勇介はこちらを一瞥するが、気にせず扉を開けた。


何度か来たことのあるさびれた喫茶店の中には、見慣れた顔ばかりな上に、空気は重々しい。



「奈々も座って。」


樹里の横には泣き腫らしたような沙雪が顔を俯かせていて、その向かいには恐ろしい剣幕のヒロトとスッチまで。


ヒロトが来ていたのは、店の前に置かれていた単車を見て気付いてたけど、これは一体何事なのだろうかと思ってしまう。


勇介は何も言わずに細い通路を挟んだ隣の席に腰を降ろし、迷ったが、あたしも彼の向かいに腰を降ろした。


本当に久々に会ったヒロトはこちらを見ようとはしないが、そんなことを気にしている場合ではなさそうだ。



「で、どうしたってのよ?」