無事にテスト期間を終え、すぐに夏休みに突入した。


結局何ひとつ解決することはなかったけど、女3人、開放的に遊べば自然と笑顔になれるから不思議だ。


海に行ってみたり、樹里のお兄ちゃんたちとバーベキューもした。


あたしは勇介と星を見に行ったし、沙雪も大地くんとは会っているみたいだ。


樹里は知らないが、まぁ、地元の友達と騒いでいると聞いたので、ヒロトやスッチ達と一緒なのだろうと思う。


気付けばあれほどしていた勉強のことも忘れ、毎日遊びまくっている間に8月を迎えていた。


正直、夏らしさ全開といった様子の蝉の鳴き声は、耳触りでしかないけど。



「奈々、今日どこ行く?」


「んー、暑くないとこ。」


「そればっかじゃん。」


「だって暑いもん。」


うちの近所のコンビニで勇介と待ち合わせることが増え、今日も店の軒先の日陰になっている場所で、アイスを食べながらそんな会話を交わしていた。


アスファルトから照り返す陽は、目の前に置かれている彼の単車を一層黒光りさせている。



「てか、毎日暇!」


だから同じく毎日暇をしている勇介と、デートのようなことばかりしているのだろうけど。


付き合ってもいないのにこう毎日一緒にいると、もうそんなのはどっちでも良いとさえ思わされる夏の誘惑は、怖いものだ。


とりあえず、貞操の危機は辛うじて守っているけども。


彼の頭は少しだけ明るく染め直されていたが、だからなのか余計に夏が似合うと思う。


私服の方が格好良く見える、なんてことは本人には絶対言わないけど。