スッチが庇ってくれたあの日の放課後、結局はどうすることも出来ず、気付けば勇介に電話を掛けていた。


だからあの時も、慰めてくれたのはこの人だったのだ。


もちろん、今だけでもスッチのためにも勉強しよう、と背中を押してくれたのも、勇介だ。


だからもう、一緒にサボろう、なんて誘ってくることはない。


きっとあたしは、シンちゃんやトキくんに依存するように、勇介も心のどこかでそんな存在にしてしまっている気がする。


だからやっぱり、会うのははばかられた。



「夏休みまではさ、俺待ってるから。」


これって忍耐強くない?


そんなことを言いながら、彼は笑う。


勇介は、本気であたしが夏休みまでは真面目になると言ったので、どうやら色々と我慢してくれているらしいけど。


でも、あの一件の後から、よくメールをするようになった。


まぁ、あたし達は元々そんなキャラでもないので、人が聞けば頻繁とは呼べないだろうけど。



「あと10日だね。」


「…そんな、指折り数えなくても良いじゃん。」


てか、アンタも勉強しろよ、って感じなんだけど。



「だって俺、こんなに待ち遠しい夏休みって初めてだもん。」


「何か嫌味に聞こえるー。」


ははっ、と笑った勇介は、きびすを返した。


あたし達の距離は、随分と近づいたような気もするが、今は考えないようにと努めた。