体の芯がぞくりとするほど、甘い声。


梳かされたあたしの髪は、彼の指先を抜けた。


困惑と、恥ずかしさと、とにかく色んな感情が混じり、思考が追い付かない。



「今度は怒らないんだね。」


反応の遅れたあたしをふっと笑い、驚いた瞬間に引き寄せられた。


わっ、と思った時には遅く、勇介の頭はあたしの首筋に埋まっている。



「…ちょっ…!」


言い掛けたが、そこに触れた唇。


先ほど彼がなぞって指を止めた辺りはきつく吸われ、何をされているのかくらいは想像に易い。


抵抗しようとしてもその力は強く、勇介は熱っぽい瞳を上げた。



「今度はマジでついたね、キスマーク。」


制服で隠れるかどうかの、鎖骨の近く。


とんとん、とわざとらしく場所を指し示してくれた彼に、あたしは唇を噛み締めた。



「…何で、こういうことっ…」


「奈々にしかしないって言ったじゃん。」


あたしの言葉を遮り、勇介は悪びれるでもなく目を細める。


わなわなと怒りに震えてももう遅く、急いで体を離して乱れた呼吸のままにあたしは、肩で息をした。


つまりはその“誓い”とやらのつもりなのだろうが、こんなことをされては困る。



「葛城は、気付くかな?」