大きな瞳に好奇の色を隠すことなく混じらせ、沙雪はにやにやと問うてきた。


授業を進める教師も無視で、あたしたちはひそひそと言葉を交わす。



「奈々が学校の誰かに興味持つなんて、どういう風の吹きまわしー?」


「どうもしないよ。
ただ聞いてみただけだって。」


「嘘だぁ!」


「ホントだっての。」


ふうん、と言っただけの彼女は、早速手鏡を取り出し、まつ毛をいじる。


確かにあたしは、学校の人間に興味はない。


と、いうか、学校内で付き合ったり別れたりなんて面倒だから、誰ともそういう関係にならないように努力していたはずだったのに。


なのにあの、土屋勇介の存在だ。



「ヒロトくんが知ったら泣いちゃうだろうねぇ。」


ヒロトが泣くわけなんてないけど、でもキレられそうだ。


あたしは別にアイツの彼女でも何でもないはずなのに、それも怖いから嫌だった。



「大丈夫だよー。
さゆは口が堅いからぁ。」


あたしを見るでもなく、沙雪は笑う。


これ以上余計なことは言うまいと、あたしは引き攣る口元を無理やりに上げた。


すると彼女は何かを思い出したように、こちらに視線を移してくれる。



「そういえばあの人のいるグループってさ、ヒロトくんたちのグループと仲悪いんだって。」


「で?」


「奈々ってどっち派?」


意味がわからない。


どっちとかそれ以前に、そんなのどうだって良いじゃないか。



「あたしは軽薄そうなの全般が嫌いだって言ったじゃん。」