「…勇介には関係ない。」


これはあたしとヒロトのことで、だからそこに彼は何の関係もない。


それでも、あたしの言葉もまた、どこか突き放すようになってしまう。


でなければ、この空気に耐えられなかったから。



「関係ないって、何?」


勇介が怒ることも当然だろうが、それでもあたしは唇を噛み締めた。



「それって俺のこといらないってこと?」


いるとかいらないの問題ではない。


それでも先日、あたしが勇介との行為を拒否したことは事実なのだ。



「言っとくけど、俺もマジだから。」


それは多分、自分だけのおもちゃを取られた子供と似たようなものなのだろう。


何より相手はあのヒロトで、だからこそ、彼はそれを許せないでいる。


つまりはその対象物があたしじゃなくても、ということ。



「好きって、俺言ったよね?」


「…けどっ…」


その言葉は、この人にとっては愛情表現なんてものではなかったはずだ。



「奈々がアイツの所為で泣くんなら、俺はそれを許せない。」


不意に伸びてきた指先は、あたしの唇を滑る。


びくりと肩を上げたが、幸か不幸か周りに人の姿はなく、彼は目を細めるように首を傾けた。



「誰にも触らせない。」