「お腹空いてない?
何か作るし、一緒に食べようよ。」


彼の趣味は料理だったりする。


思わず顔をほころばせてしまえば、トキくんは早速冷蔵庫に向かった。



「手伝おうか?」


「良いから、良いから。
お客様は座ってテレビでも観てて。」


軽くあしらわれ、あたしは口をすぼめた。


実はあたしが料理を教わったのはこの人で、だからトキくんの作るものがおふくろの味だったりもする。


本当に、不思議な関係だと思うけど。


だってきっとこの人は、あたしがシンちゃんと無関係の人間ならば、こんな風にはしてくれないだろうから。



「ここに来たことは、ママさんや兄貴には内緒にしといてあげるね。」


「ありがと、トキくん。」


「いえいえ。」


彼とあたしの間には、当然だけど男女の関係なんてものはない。


だからこそ、素直に頼っている自分がいる。


まぁ、こうやってあたしの逃げ癖は拍車がかかるのだろうけど。



「あ、今日ここに泊まるなら、俺から連絡入れとくけど?」


「んー、それは良いや。」


「そっか、わかった。」


そう言った彼はまた、料理をする手を進めた。


勇介と同じくらい、あっさりとした返答だと思った。