「アンタ、こんなとこで遊んでないで学校ちゃんと行きなさいよ。」


「ギリギリ留年しなきゃ問題ねぇだろ。」


「そういう問題じゃないでしょ!」


「ったく、うるせぇ女だなぁ。」


そう言って、心底面倒くさそうな顔をしたヒロトは、煙草を咥えた。



「心配してやってんでしょうが、馬鹿。」


こんなんでも見捨てることの出来ないあたしは、もしかしたら樹里と同じくらい世話焼きなのかもしれないけれど。


彼の吐き出す煙はほの暗い照明に吸い込まれるように昇り、少しの沈黙が嫌になる。



「なぁ。」


そんな中で先に言葉を手繰り寄せたのは、ヒロトの方。



「俺、アイツと別れたしさ、ちょっと真面目んなろうかと思ってんだけど。」


お前に、と付け加えられた台詞。


瞳だけをこちらへと滑らせる彼に、身を強張らせてしまう。


てか、この前から宣言されっぱなしで、あたしにどうしろと言うんだ。



「そんなこと言われたって困るんだけど。
アンタあたしに何する気よ?」


「別に何もしねぇよ。」


いやいや、説得力ないし。


こめかみを押さえてため息を混じらせるあたしに、ヒロトは不敵に唇の端を上げた。


そういう顔が怖いんだけどな、と正直思う。