それでも涙ひとつ見せたことのない樹里は、きっと強がりだから悪いのだろう。


でも、そんな彼女は嫌いじゃない。



「気分転換に、今度は年下とでも付き合ってみたら?」


「大きなお世話ですー。」


「はいはい。」


悲しくならいように、あたし達は笑った。


笑ったらまた虚しくなりそうで、雲に隠れてしまいそうな夕暮れを見た。



「沙雪が羨ましいね。」


「だよねぇ。
あたしもあんな風に、馬鹿みたいに男に一直線になりたよ。」


いつもきらきらしてる沙雪に、似た者同士のあたし達は、心の中で何かを求めているのかもしれない。


だから眩しくも羨ましくて、そして自分たちの馬鹿さ加減を思い知るのだ。



「さゆは今、幸せなんだろうね。」


何を以って幸せなのか、なんてことは愚問なのだろうけど。


でも確実に、満たされていないと感じているあたし達は、幸せじゃないんだと思う。


そんな風に思うことが、また虚しさに繋がった。



「奈々はさぁ、男ふたりが言い寄って来てくれてんじゃん。」


「どっちも馬鹿男だけどね。」


「そりゃそうだ。」


樹里はケラケラと笑った。



「さーて、そろそろ帰りましょ。」


そしてあたし達は話に区切りを見つけ、立ち上がる。


梅雨の中休みだったというのに、心はあまり晴れた気がしなかったけど。