眉を寄せるスッチに、樹里が「勇介の友達。」と横から言う。


ヒロト派の彼は、やっぱり困ったように苦笑いを浮かべていた。


樹里はそんなスッチを一瞥し、ため息を混じらせる。



「てか、その話は後でじっくり聞くから。」


そのまま彼女は沙雪を引っ張り、あたし達から離れて行った。


取り残されたスッチと共に、どちらからともなく曖昧に笑うことしか出来ない。



「とりあえず俺らも教室行こうよ。」


だね、とあたしは言う。


何だか変な組み合わせのあたし達は、やっぱり大した会話をすることもない。


校舎まで入ったところで、彼はおもむろに足を止めた。



「なぁ、さゆのアレはマジ？」


「…マジ、だと思うけど。」


ふうん、とスッチ。


彼はそれ以上何も言うことなく、またかよー、と笑っていた。



「恋愛モードのさゆはうるさいしなぁ。」


確かに、沙雪は恋をすると周りが見えなくなるので困る。


おまけに今回の相手は大地くんだし、ヒロトが知ったらまた勇介を目の敵にする一因にもなるだろう。


だからスッチはみんなのお兄ちゃんみたいな人なので、その苦労も並ではないはず。



「スッチ、かなり沙雪の恋愛相談に乗ってあげてるもんね。」


「そうだよ、もう。
毎回、痴話喧嘩程度でなだめるの、大変なんだよ？」


御苦労さま、とあたしは言う。


で、またどちらからともなく曖昧に笑った。