少し迷ったけど、あたしは勇介を見上げた。



「ヒロトに意味不明な宣戦布告されたんだけど。」


「…葛城に、何?」


「向こうがその気なら、こっちもマジで行く、って。」


言葉の意味を考えるように宙を仰いだ勇介は、ふっと笑う。



「何かよくわかんないけど、わかった、って言っといて。」


「は?!」


勇介まで、一体何を考えているのか。


第一、喧嘩だったらもう勘弁だ。



「要は負けなきゃ良いんでしょ?」


「…何に?」


「そんなの俺は知らないけど。」


勇介ってヤツは、自分のことだって自覚を少しは持ってほしい。


と、いうか、これは明らかにあたしの所為っぽい。



「あたしもう嫌、学校行きたくない。」


「じゃあ俺とずっとここでこうしてる?」


その笑顔に腹が立ち、ぺしっと叩いてやる。


なのに勇介は笑ってて、ひとつとして真面目に考えてはくれないらしい。



「それより奈々、さっき俺が言ったことちゃんと聞いてた?」


何がよ、と言うより先に、体はベッドへと押し倒される。


スプリングは軋み、水気を含んだ髪の彼は、目を細めるようにしてあたしを捕える。



「葛城の名前とか聞かされると、腹立つんだよね。」