バスローブに身を包んで浴室から出てみれば、勇介は煙草の煙を吹かしていた。


そしてあたしに気付き、髪の毛ちゃんと乾かさなきゃ、と笑う。


気を使って優しくされているみたいで、そんな彼から視線を外した。


部屋はこんな時期なのに暖房をつけてくれたからか、先ほどよりもあたたかくて、寒さは幾分和らいだ。


ソファーに座っている彼とは距離を取り、あたしはベッドサイドへと腰を降ろす。



「葛城に苛められたんだって?」


「別に苛められてないから。」


「じゃあ、何で泣いたの?」


理由が分かれば苦労はしない。


ただ、頭の中には“中途半端”という文字がよぎり、いたたまれなくなる。


まるで、どちらかを選べと答えを急かされているよう。



「…だって、大地くんが…」


「大地が、何?」


勇介はぴくりと眉を動かした。


でも、続きを言わないあたしに痺れを切らしたかのように、彼は煙草を消し、こちらへと歩み寄る。



「大地が奈々に何か言ったんなら、俺はアイツだろうと許さないよ?」


あたしと同じ目線の高さに合わせるようにかがみ、彼は冷たい瞳を向けてくる。


結局、ただ首を横に振ることしか出来なかった。


だって勇介と大地くんは友達なんだし、沙雪のことだってある以上、険悪になるのは避けなければならないのだから。



「…ヒロトだって勇介だって勝手だし、あたしは自分の気持ちなんてわかんないし、それにっ…」


そこまで言った瞬間、抱きすくめられたことに驚いた。



「泣かないで。」