沙雪が教室からあたしのバッグを取って来てくれ、樹里に手を引かれて学校を出た。


お昼は少し過ぎているものの、昼食を取っていなかったあたし達は、駅近くのマックに足を運ぶ。


もちろんあたしに食欲なんてものはないのだが、半ば強引に連れて来られた格好だ。



「別に奈々が泣くことないじゃーん。」


「そうだよ、あれはヒロトが悪いんだからさぁ。」


顔を俯かせたまま、ろくに喋りもしないあたしに、彼女たちはくだらないことばかりを話し掛けてくれている。


時にはテレビドラマのこと、時にはお化粧品のこと、でも決まって最後は同じ言葉だ。



「アンタはホントこうなると、ヒロトと同じくらい手に負えない。」


別にあたしは当たり散らしもしないってのに、同じにされたくはないんだけど。


そんな会話をしながら、ふたりはあたしの分までハンバーガーやジュースを注文してくれ、一番奥の席へと向かった。



「あ!」


と、声を上げたのは沙雪だった。


それに弾かれたように顔を上げてみれば、何故だかそこには勇介と大地くんの姿がある。


だけどもこんな顔なんて見られたくもなくて、またあたしは顔を俯かせた。



「ちょっと勇介。
アンタ奈々のことどうにかしてよー。」


「…奈々が、どしたの?」


「ヒロトをなだめてたはずなのに、今度はこの子が泣き出して。」


勇介の前でもなんら動じることなくヒロトの名前を出せる樹里は、やっぱりすごいと思うけど。


彼はあたしを一瞥し、黙って立ち上がる。



「奈々、来て。」