刹那、声に弾かれ顔を向けた。


息を切らした沙雪が駆け寄ってきて、急ぎあたしの腕を引く。



「ちょっ、何?!」


「さゆちゃん、どしたの?」


大地くんが思わず制止するが、沙雪はそれどころではないと言った様子だ。



「ごめん、喋ってる場合じゃないの!
とにかく奈々、早く来て!」


沙雪が大好きな大地くんと喋ってる場合じゃないなんて、一大事だ。


強引に引っ張られ、そのまま彼から少し離れた場所まで来たところで、沙雪は呼吸を落ち着ける。



「樹里が奈々のこと呼んできて、って。」


「うん。」


「ヒロトくんが手に負えないらしくて。」


だからって、何であたしが呼ばれなきゃならないのか。


沙雪はまだ荒い呼吸のまま、あたしの腕を引いて保健室まで連行する。



「今さ、スッチと樹里に任せてんだけど。」


「ちょっと待ってってば!」


てか、このおっとりしている沙雪が言うんだから、大変なのはわかるけど。


でも、大地くんの先ほどの言葉が脳裏をよぎらないわけではない。



「だってヒロトくん、ガラス割ったんだよ?」


「…うん、みたいだね。」


「で、奈々は勇介くんとどっか消えちゃうし。」


ごめん、と無意味に呟いた。


沙雪が保健室の扉を開けてみれば、3人の視線がこちらへと集まる。