「あのふたりって、いっつもあんな風なの?」


少なくともあたしは、ふたりが衝突したのなんて初めて見たけど。



「最近はお互い無視してたみたいだけど。
まぁでも、何かと葛城が絡んでくるし?」


今日のは明らかにヒロトが悪いが、でもあたしは、どちらの悪口も聞きたくはなかった。


だからって、それを勇介派の大地くんに言えるわけはない。



「で、奈々ちゃんは?」


「…あたしが、何?」


「俺、奈々ちゃんと勇介ってそのうち付き合うんだと思ってたんだけど。」


なのにヒロトとどういう関係なのか、ってことだろうが。


どうしてこう、みんなあたしに答えを求めたがるのか。



「奈々ちゃんさ、この状況で中途半端なことしてると、あんま良くないんじゃない?」


「…は?」


「何も知らないやつらから見たら、さっきのって奈々ちゃんの取り合いに見えたと思うよ?」


つまりはあたしは、そのうちどちらのグループからも睨まれることになる、ってことだろうけど。


そりゃあ確かに、睨み合うふたつのグループと平等に仲良くしてるなんて、理想論であり、良い気はしないだろうが。


でも、少なくとも、大地くんはあたし達のことなんか知らないんだから、言われる筋合いはない。



「それって沙雪のことも含めて言ってる?」


問うてみれば、彼は曖昧な顔で笑う。


樹里は完璧にヒロト派だろうし、沙雪は大地くんの方に傾いている。


で、あたしだけ半端ってことか。



「奈々!」