つまりは絶対に混ざり合うことなんかない関係だ。


大地くんはポケットに手を突っ込み、鬱陶しそうに雨空を見上げる。



「ふたりって中学が隣同士でさ、その頃からよく衝突してて。」


「…そう、なの?」


「最初は後輩同士がモメたことから発展したみたいなんだけど、とにかくずっと睨み合っててね?
そこへきて、同じ高校に入学しちゃったわけじゃん?」


だから因縁浅からず、ということか。



「勇介の中学の頃のこと、知らない?」


「知らない。」


と、いうか、あたしは彼について何も知らないのだが。


そっか、と言った大地くんは、困ったように笑って見せる。



「すんごい荒れてて、誰の手にも負えない感じだったんだ。
葛城もだけど、だからもう、めちゃくちゃで。」


「…それ、本当の話?」


いぶかしげに問うと、「想像出来ないでしょ?」と彼は笑う。



「勇介さぁ、高校入って急に落ち着いて。
そういうのって中学までっしょ、とか言って、今は普通っぽくしてるから、余計に葛城はそれが鼻につくんだと思うけど。」


それはもしかして、家が荒れているのと何か関係があるのだろうか。


ふと思った疑問は、だけども言葉には出来なかった。



「勇介って後輩の女の子から人気あんじゃん?
それってみんな、昔の勇介のこと知ってるからでもあるんだよ。」


単に顔だけで寄ってきているってわけじゃなかったのか。


だったら時折見せる恐ろしいほど冷たい瞳も、納得は出来るわけだが。


何だか今更ながらに、すんごく面倒なことを聞かされている気さえしたが。