ひどく冷たい瞳に見据えられる。


気付けばまたこの状況だ。



「あんなの止めに入ろうとしちゃダメじゃん。」


「……え?」


「だからさぁ。
もしあの時怪我してたらどうすんの、って話してんの。」


あぁ、と思わず声を上げた。


それでも勇介は、あたしとヒロトの関係を聞いてきたりはしなかった。


この人が喧嘩なんかするようなタイプだとは思えなかったけど、何より相手に対して“お前”なんて言葉、初めて聞いた。


と、いうか、改めてこの状況は、ヤバいんではなかろうか。



「奈々、聞いてる?」


いつぞやの、樹里の三角関係を狙う言葉を思い出す。


で、おまけにこのふたりは、理由は知らないが、相当仲が悪いご様子だ。


どっち派なのかとか沙雪も言っていたし、益々この後、教室に戻れないじゃないか。



「奈々、良いから落ち着けっての。」


「アンタは落ち着き過ぎなのよ!」


腹が立ち、渾身の力でぺしっと叩いてやった。


あたしはこれでも平穏な日常を望んでいるし、ごく普通のカレシが欲しいとも思ってる。


なのに、この状況は一体何だ。



「そんなに葛城が心配?」