はぁはぁと肩で息をするあたしと、声に弾かれたように足を止める勇介。


こちらへと向けられた顔は、苦笑いだったので呆れた。



「何すんのよ、馬鹿!」


「はいはい、すいませんでしたー。」


「真面目に言いなさいよ!
てゆーか、何であたしのこと引っ張ってきたのよ!」


「いや、勢い?」


相変わらず、そこに一切の悪びれた様子は見受けられない。


あたしは肩を落とすようにして、こめかみを押さえた。


本当に、それぞれのグループ同士、すんごく仲が悪いのはもうわかったけど。


てゆーか、何で勇介とヒロトがこんなにも犬猿の仲なのかは知らないが、今はそんなこと、どうだって良い。



「とりあえず、怪我してない?」


ぶつぶつと言っていると、勇介はあたしの顔を覗き込んで来た。


不安そうで、悲しそうな瞳が僅かに揺れる。



「…あんなので怪我してたら、アンタと走ってるだけで死んでるわよ。」


本当に、ただ手が当たった程度だ。


気付けばそこは、第4校舎の人気のない階段で、あたしは長くため息を吐き出しながら、腰を降ろした。



「俺さ、危機感ないって何回も言わなかった?」


勇介までも、何故だか長くため息を吐き出しながら、あたしの隣へと腰を降ろす。


実験棟の壁は分厚くて、だから雨音までは聞こえてこない。



「奈々、自分が女だってこと、ホントにわかってんの?」