その言葉に足を止めたのは、勇介の周りの連中だった。


もちろんその中には大地くんもいて、彼らは眉を寄せてヒロトを睨み返す。


勇介は一瞬、心底面倒くさそうな顔をして、ヒロトを見てからあたしを見た。


騒ぎに気付いたかのように、少し向こうで馬鹿騒ぎをしていたヒロトの友人連中までも、わらわらと集まってくる。



「うぜぇんだよ、土屋。」


まさか、ヒロトが勇介を名指しするとは思わなかったけど。


でもこれは、一触即発っぽくて、睨み合う彼らの瞳は恐ろしく歪んだもの。


少なくともあたしは、勇介のこんなキレたような顔なんて知らない。



「だから?」


「スカしてんなよ、気に入らねぇ。」


はっきり言って、ただヒロトが因縁をつけているだけだ。


少し向こうで樹里と沙雪は、固唾を飲んで見守っている。



「ウザいのって葛城じゃない?」


勇介がはっと笑った瞬間、ヒロトはその胸ぐらを掴み上げた。


彼の傍にいた女たちは、ひっと顔を引き攣らせ、勇介から離れる。


あたしは唇を噛み締め、ふたりを睨んだ。



「やめなよ、ヒロト!
こんなの先生にでも見つかったら、またアンタ…」


思わず制止しようとしてその腕を掴んだ瞬間、ヒロトはあたしの手を振り払う。


驚いた次の瞬間、今度は勇介がヒロトの胸ぐらを掴み上げた。



「お前今、自分が何やったかわかってる?」