人の輪を外れ、そうヒロトに声を掛けたのだけれど。


彼はうるせぇよ、と言って、舌打ちを混じらせる。



「ババアと喧嘩したんだよ。」


「で、そんなキレた顔してんの?」


「悪い?」


悪くはないけど。


ヒロトはこれで結構、お母さんが好きなのを知ってるから。



「理由知らないけど、早く仲直りしなよね?」


我が家では、喧嘩なんてものに発展することはない。


でも、ヒロトもヒロトのお母さんも、似たように気が強いので、こういったことも日常だ。


ただコイツは、勇介とは違って、誰かれ構わず当たり散らすから始末が悪い。



「アンタが機嫌悪いと、みんな困るんだからね?」


「じゃあヤらせろよ。」


「何でそこで、あたしがアンタとヤる話になんのよ。」


本気で言ってないくせに。


あの夜のことは、ヒロトが何も言わないから、あたしも何も言わなかった。



「てめぇ、んなこと言ってとマジで犯すぞ。」


「婦女暴行宣言してんじゃないわよ、恐ろしい。」


ヒロトはチッと舌打ちを吐き捨てた。


そして彼は視線を滑らせ、少し向こうに見つけた人物の姿に、一層眉間にしわを刻む。


思わずあたしもそちらへと顔を向けてみれば、勇介と、その友人が3人、女を引き連れこちらに向かって歩いて来る。


一瞬不安になり、ヒロトへと顔を向けた。



「マジで目触りなんだけど。」