気付けば雨の日が増えたのかもしれない。


今日も降りしきる雨音が、やけに耳触りに響いていた。


ヒロトは何があったのか、不機嫌さ全開と言った様子で、誰も彼には話し掛けようとさえしない。


こういう時のヒロトに近づけば、こっちがとばっちりを受けることを、みんな知っているからだろう。



「スッチ、この前ありがとね。」


「あぁ、どういたしまして。」


あたしの横では沙雪が、必死で携帯の画面と睨めっこをしていた。


多分大地くんとメールでもしてんだろうが、それにしてもよく飽きないな、と正直思う。



「奈々とスッチ、どしたの?」


樹里が会話に割り込んで来た。


そして珍しい組み合わせだけど、と付け加える。



「この前スッチが奢ってくれたの。」


「マジ?
何であたしのこと誘わないのよー。」


そんな風に騒ぎながら、ヒロトのグループの輪に混ざっていた。


ちなみに、東階段はこいつらの溜まり場で、西階段が勇介たちの溜まり場だ。


A組であるあたし達の教室は、東階段の隣なので、必然的にこっちのグループといることが多いのだけれど。



「てか、何でスッチだけ人気?」


「そうだよ、不公平っしょ。」


他のメンバーは、そう口を尖らせる。


あたしも樹里も沙雪も、何故だかスッチだけは好きなのだ。


それにしてもヒロトは、窓に寄り掛かるように背中を預け、外の世界を見つめているだけ。



「ねぇ、何かあった?」