顔を上げてみれば、また笑われた。



「石橋を叩いた後で、人の後ろから渡るタイプ。」


言葉の意味を探って首を傾げてみれば、



「遊園地行ってもさ、アトラクションに乗ってる人達をまず確認して、それから考えて決めるような面倒な子だったわ。」


「…面倒、って。」


我が子に向かって、随分な物言いだ。


不貞腐れるように口を尖らせてみれば、ママはすました顔で笑って見せる。



「アンタは思い切って男の胸に飛び込むってことが出来ないもんねー。」


そんなことが出来れば苦労はしない。


と、いうか、誰の所為でこんな性格になったと思っているのか。



「あたしもママみたく図太く生きたいよ。」


「あら、失礼ねぇ。」


だけども全然気にしていないような顔。


そういうところが図太いんだけどな、と思う。


ママはあたしのことを慎重すぎると言うが、勇介やヒロトは危機感がない、と口うるさいし、結局のところ、自分自身がよくわからない。



「ねぇ、あたしってそんなに簡単にヤれそうに見える?」


一応、曲がりなりにも実の母親に聞くことじゃないとは思うけど。


おずおずと問うてみれば、彼女はあははっ、と笑ってから、「見える!」とこちらを指差した。



「奈々は一見ガードが堅そうに見えても、実は結構隙だらけだからね。」


あそ、と諦めるようにあたしは返す。


ママに、しかも食事中に聞くような話ではなかったようだ。