向かい合わせで食卓に腰を降ろし、囲むテーブルはいつも、ママとふたりきり。


まぁ、別にそれしか知らないので、これが普通ではあるけれど。



「最近随分とご機嫌斜めね。」


時に子供のようで、時に理解者の姉のよう。


決して母親らしくはない彼女だけれど、でもあたしの変化には敏感だ。



「…わかるの?」


「そりゃあママは奈々とずっと一緒だからね。」


でも、ママは無理に聞き出そうとなんてしない人だ。


勇介やヒロトのことを、今更どこからどうやって話せば良いのかもわからない。


思わず視線を落としてみれば、ママはくすりと笑って見せた。



「奈々は昔から何も言わない子だからね。
ママ、これでも心配してんのよ?」


「うん。」


ママは遊ぶのが大好きなくせに、それよりずっと、あたしを大事に思ってくれていることを知っている。


例えばあたしが熱を出したりしたら、彼女は寝ずに看病してくれるから。


だからこそ、あたしはママが遊んでても良いと思ってるし、輝いているママが好きなのだ。



「ママはさ、あたしの“父親”のこと、好きだった?」


「えぇ、もちろんよ。」


あたしは恋愛体質のママの子なのに、やはりどこか欠陥があるのかもしれない。


彼女は箸を置き、柔らかく笑ってあたしの顔を覗き込む。



「奈々は昔から慎重に見えて、ただの怖がりだからね。」