「ずうずうしい。」


「その台詞はアンタに返す。」


口を尖らせると、彼も同じものを買い、ふたり、ベンチへと腰を降ろした。


もうすぐ朝のホームルームが始まる時間も近く、次第に人の姿は減っていく。



「それよりさっきの子、良かったの?」


あぁ、と彼は、思い出したように呟いた。



「何かひっつかれてて邪魔だったし、奈々が来てくれてラッキーだったよ。」


「だからって、ああいうこと言っちゃ可哀想でしょ。」


って、何であたしがこいつの取り巻きを擁護してんのかがわかんないけど。



「じゃあ何であんなのはべらせてんの?
もしかしてハーレムでも作る気?」


眉を寄せてみれば、勇介は声を上げて笑った。


笑ってから、ふと真剣な顔に変わる。



「俺がそんなつまんないことして、楽しいとでも思う?」


先ほどまで笑っていたからか、その顔が余計に冷めて見えた。


夜に会えば随分と柔らかい顔をしてるくせに、学校ではこういった顔ばかりだ。


てか、楽しくないならしなきゃ良いのに。



「アンタと遊んでたら遅刻しちゃう。」


逃げるようにさっさと立ち上がり、勇介を残して購買を出た。


少し苛立ちながらも教室へと向かうと、廊下では、まだきゃっきゃと沙雪が騒いでいた。