何故あたしは、沙雪のように簡単に人を好きになれないのだろう。


と、いうか、何故彼女はいつも、好きって気持ちがはっきりしているのだろうか。


羨ましくもそんなことを考えていると、購買まで来たところで、あたしの足は自然と止まった。



「すんげぇテンション低そうだね。」


勇介と、そして女。


まるで一緒に登校してきたように見え、声を掛けられたあたしは、彼女から無言のままに小さく睨まれる。


勇介は、そんな視線に気付いたのか、隣の女に瞳を滑らせた。



「邪魔。」


彼女はびくりと肩を上げる。


まさか自分がそんな扱いをされるだなんて、と言った顔で、でも勇介の瞳は恐ろしく冷めたもの。



「邪魔だって言ってんの、わかんない?」


そう、更に冷たい瞳で女を見る。


彼女はわなわなと震えた唇をぐっと噛み締め、怒った顔できびすを返した。


もちろん、最後まであたしを睨みながら。



「…何かすんごい恨まれた気がする。」


口元を引き攣らせて勇介を見たが、彼は笑いながら自販機に小銭を入れる。


そしていつものボタンを押し、ココアを買った。



「ちょっとお茶してく?」


そう言って差し出された、パックのジュース。


本当にこの人は、自分に好意を持ってくれてる相手にさえ、興味はないのだろう。


諦めるように肩をすくめ、あたしはそれを受け取った。



「もちろん奢りでしょ?」