「なぁ、ヤらせろよ。」


「アンタさぁ、二言目にはそれしか言えないわけ?」


チュッパチャップスを咥え、ヒロトを軽蔑の瞳で睨むのだが。


こいつがそんなものに動じてくれないのはいつものことで、彼はあたしを鼻で笑う。



「いい加減、俺のこと真面目に考えろよ。」


そう言って、ヒロトはあたしの肩に腕を回す。


馴れ馴れしくて、こういうところが嫌になるのだが。



「アンタ、西女に彼女いんじゃん。」


「あれと別れれば問題ないんだ?」


ぶっちゃけ、こんなヤツには付き合ってられない。


てゆーか、そんな適当に女と付き合ってるヤツに口説かれても、って感じなのだが。



「あたし、アンタと遊んでるほど暇じゃないから。」


確かにヒロトのことは嫌いではない。


けど、見た目は恐ろしい上に言動もチャラく、微塵も発言を信じるには値しないのだ。


なのに彼は、去年からずっと、こうやってあたしを口説いてばかりいる。



「てゆーか、煙草の匂い移るから。」


そんな理由をつけ、ヒロトの腕を振り払う。


あからさまに舌打ちを混じらせた彼は、さっさと背を向け購買を出た。


ヒロトの後ろ姿を見送り、それまで黙って見守っていたおばちゃんと目が合った時には、互いに苦笑いを浮かべてしまう。


まったく、朝から疲れる。