「確か女王の話をしていた途中だったと思うけど…」
未だにしかめっ面で詳しく覚えていないと続けるティック。
そんな様子を見ていると、ビルさんやドードさんに対してはため口なんだなぁと改めて思う。
それは私の今まで見ていたティックには不釣合いに見えるが、まだ中学生、高校生くらいであろうティックには自然なのかもしれない。
「アリス様は覚えていますか?」
そんな風に考えながらぼんやりとティックを見ていたら、その主の赤い瞳と急に視線が合った。
「え……えーっと……」
一際大きい赤い瞳が私を捉えて離さない。
そのせいか私の思考回路が鈍る。
どこまでだったっけ……確か女王のことを話している途中で……。
「独裁政治」
いろんな話をしていた中の唯一はっきり頭に浮かぶ単語を発する。
それでも私の思考回路は未だにいつも通りに機能していない。


