それよりも……
薬品
からしなどとは違う薬品……。
血の気が引いた感じがする。
“カシャン”
私の動揺を証明するように私の持っていたフォークが落ちた。
「ティック。アリス様に対しては人体実験はませんよ」
口調は穏やかだが、言っている内容が内容だけに笑えない。
そのせいか相変わらず顔は引きつったままだ。
しかも“は”というところが気になる。
私以外なら平気でするって意味なのだろうか。
それから再びフォークを取りながらケーキを見る。
ビルさんいわく“安全”なケーキらしいが、薬品というたった一言で食欲が無くなり……
「すみません…やっぱり遠慮いたします……」
ビルさんに申し分けなく思いつつもいわくつきケーキを返した。
ビルさんはティックに対し裏がありそうな微笑を一瞬すると、私のほうを見て少し寂しそうにそうですかと呟いた。
そのせいか私はいたたまれない気持ちでいっぱいだった。


