「えらばれた?」 『その内理解する時が来るはずよ。“ア‥”』 “その人”の言葉を繰り返すように尋ねると、“その人”は私をなでながら、人の名前のような言葉を言った。 閉じ込められている記憶はここまで、それにそれからしばらくして、“その人”は見えなくなってしまった。 そして、年を追うごとに私の記憶からも薄れていった。 それから……10年くらい経って、それがもう記憶の彼方に消えてしまったころ、私は高校生になっていた。