「ルイが……僕に心を分けてくれたから」
複雑な表情をしながら私を見つめる。
「私が?」
助けた記憶なんて無い。
「口移しで」
口移しって……。
「キ、キ、キキキ……ス」
「キス?魚?」
こんな古典的なボケをされても突っ込む余裕なんて無い。
「そ、その……あの」
「だから僕はここにいるんだ」
ここまで私は意識しているのに、まるで何もなかったような表情で言うクロノスさん。
あなたの辞書にはキスはどう入っているんですか?
そう尋ねたいがそんな余裕なんてない。
「僕を救ってくれてありがとう」
私に目線を合わせるように少しかがみながら言った。
「……。」
私の目の前でクロノスさんがほほ笑んだ、それから少しクロノスさんが立ったせいか視線が遠のくと急に暖かいぬくもりに包まれていた。
「……。」
気づいたら……私はクロノスさんの腕の中にいた。


