「ルイ様。失礼いたしました」


城に長く滞在するわけにはいかないと言う事で、話が終わるとティックは私の部屋を出て行った。

不規則な足音が廊下に響いていたがしばらくするとその音もなくなり、また静かになった。


「クロノスさん」


ティックがいなくなった後も私の心の中はクロノスさんが占めていた。



“ルイの哀しい顔を見ると、胸の中がもやもやするんだ。だからルイを泣かせないでね”



“二人はとてもお似合いです”


そう言ったティックの言葉を思い出すたびにあふれてくる妙な気持ちを感じながら。





あなたは私の結婚心があったらどう思っているのかしら?

彼のように私を捉えて離さない綺麗な満月を見ながら小さく呟いた。


一国の王子様と救世主が結ばれる話なんて存在しない……。


水のように溢れてくる感情の蛇口を占めるように私は心に言い聞かせた。


王子様と結ばれるのはお姫様だと……。


そして……

救世主と王子なんて不釣合いだと