「あのさ……」


一瞬の間の後、目線上にあげながらティックに無理矢理話題をかえる様に声をかけた。
このまま話を続けていたら、私の心臓が壊れそうだったし。
それに聞いているだけで恥ずかしさや心臓がくすぐられるような少し奇妙な感覚が生まれて苦しかった。


「何?」
「ロリーナさんって女性を知っている」


あの時の夢、奥歯に引っかかっているようで気分が悪かった。
確か私の記憶の中でティックとクロノスさんの事を呼んでいた……気がする。


「どんな方ですか?」


大きな瞳をとり大きく開かせて、いつもよりトーンが高めの声で尋ねる。

その迫力に少しだけ飲み込まれそうだったが、少し落ち着いてロリーナさんの事を頭の中から探していった。


「とても暖かくて、とても優しくて、ティックのような銀髪で……。」


今まであやふやだった記憶がパッと明るくなったように急に頭の中にロリーナさんふぁ浮かんでくる。


そうまるで月光のような銀髪、存在以上にはかなくみえた細い手足。
昔の画家が描いた女神様のような綺麗な人だった。



「たぶん僕の母さんです」


私が彼女の特徴を言い終えると、今にも泣きそうな表情で私を見つめた。


「やっぱり……小さい頃ね、ロリーナさんに会った事があるの」
「そうですか」


嬉しいような、だけど少しだけさみしそうな表情でゆっくりとうなずく。
その瞳からその瞳くらいありそうな大きな涙がこぼれた。


「心配していたわ。二人の息子の事を」
「ありがとうございます……。ルイ様」


袖口で涙を拭うと


「一緒に兄さんを助けましょう」


そう続けながら微笑んだ。


「そうだね」


そんな彼の可愛らしい笑みを見ると、こっちも同じように笑みがこぼれた。