「は、はい」
「今日は色々あったから疲れただろう。さっさと休め」
「スペードさん」
じゃあ俺はもう仕事に戻ると言いながら廊下へと行こうとするスペードさんを引き止める。
「どうして……私はクロノスさんと結婚するのでしょう」
私をただ閉じ込めてしまえばそれで済む。
わたしが存在する限り、アリスは現れないのだから。
「わからないが、唯一ついえることは」
スペードさんが怪訝な表情で答える。
どうやらスペードさんもよくわかっていないのだろう。
「言えることは?」
ゴクリと生唾を飲み込みながら次の台詞を待った。
「お前は殺されなくて済んだと言うことだ」
「確かに……。」
それだけは言える。
流石に柄ではないが、私は明日からは一応お姫様である。
そんな私を簡単に殺す事はできない。
「何かあったら、その辺で働いているやつに言え。いくら犯罪者とはいえ未来のお姫様に対して、変な態度を取る奴はいないからな」
「スペードさん」
私の部屋から出て、廊下へと向かっていくスペードさんに再び声を掛ける。
「何だ」
「クロノスさん……その……結婚の事何か言っていましたか?」
スペードさんは確かクロノスさんの隣に座っていた。
何かもしクロノスさんが言っていたら知っているはずだ。
「……。」
たずねた瞬間言葉に困ったのか、一瞬の間がある。
「言っていない」
少し気まずそうに言っていた。
「そうですか」
「ただ、無表情のあいつが少しだけ、優しそうな表情でお前をみつめていた」
スペードさんがそう呟いた気がした。
その言葉を聞いた瞬間顔が一気に熱くなったような気がした。


