「逢いたかったぞ」
「恐れ多いです……」
彼女の威圧間に圧倒されそうだったが、それでも飲まれないよう視線を外さずに言った。
「来てもらってそうそう悪いがアリス、お前には裁判に参加して欲しい」
クスリと再び妖艶な笑みをすると、まわりにいた兵士を一人呼び何かを言った。
「了解しました」
女王と兵士のやり取りを見ていると、しばらくしてから、兵士が恭しく女王にお辞儀をした。
それからゆっくりと私の方に来た。
「アリス様。只今裁判所にお連れいたします」
裁判?
状況が全く読めなく無意識にクロノスさんの方向を見ると、相変わらず無表情だった。
「母さん」
私と目が合うと、クロノスさんが急に口を開いた。
「どうした王子?」
「アリスを保護してきました」
抑揚のない淡々とした口調で言う。
クロノスさんに対しては期待してはいけない。
そう思っているのに……自分の心の中で少しだけ期待していたせいか、少し胸の奥がズキリと鋭いものが突き刺さったようだった。


